平成24年11月10日 定例会報告

   研究会のテーマは<基礎学習>です。

   午後5時から研究授業、5時30分から研究協議を行ないました。

         

 

1.指導経過

平成23年9月より週1回(60分)の学習を開始した。

(1)現在までの課題

   @ 延滞の学習(終了)

   A 形の弁別学習(○、△、□)

   B 同じの概念形成の学習

・ステップ1→具体物と具体物(終了)

・ステップ2→具体物と絵カード

     C 順序の学習

     D 未測量の学習

     E 目と手の協応動作や手指の巧緻性を高める学習

 

(2)形の弁別の学習 

【方法】

○△□のはめ板と形(はめ板1枚・形2つ)を用いて、見本あわせの方法で弁別学習を行なう。

  学習を開始するにあたり、輪郭線の違いのみの2つの形を、視覚のみで弁別することは難しいのではと考えた。

  そこで、形をよく触ったりはめ板をなぞったりと「よく触る」ことで、「よく見る」ことを促しながら、学習をすすめて

  いくことにした。選択肢(形)の組み合わせは、以下のようなステップとした。

                 

 

【結果】

  ステップ1〜3においては、正選択肢がどちらかがわかる段階になると、正選択肢先出し時に後出しの

誤選択肢をあまり見ない様子がみられていた。

ステップ4に入るとそのような様子がなくなり、正選択肢が後出しでも先出しでも、正選択肢と誤選択

肢のそれぞれに視線をとめて(注視)、選ぶことができるようになってきた。

   現在はステップ4を行なっている。同時呈示の際には、ふたつの形を見比べるための間をとるなどの配慮を

 しながら、きちんとよく見比べてから選択することができるように学習をすすめている。

 

【子どもの触り方の変化】

@  各ステップとも、学習のはじめのころは、形を触る際には援助されるままに手に形をあてられていた。

   また、凹図形の輪郭線をなぞるときも、援助されるままに一緒になぞっていた。先出しの形を触ると

   すぐにはめ板に入れようとする様子がみられた。やがて、先出しされた形が誤選択肢である場合は触って

   も入れる様子がみられなくなった。学習がすすんでくると、なぞるときは自分でも指を時計回りに動かす

   様子がみられた。

A  ステップ3になると、[はめ板をなぞる→形を触る→選択する→はめる→はめ板上の形の輪郭線をなぞる]

   という一連の流れが子どもに定着してきた様子がみられた。

   

(3)同じの概念形成の学習  

【方法】

具体物や絵カードを用いて、見本あわせの方法で弁別学習を行なう。

具体物と絵カードによる組み合わせは、以下のようなステップである。

          

【正誤の選択肢の組み合わせ】

「見本と同じものを選択する」ことを理解するために、まずは子どもの好きな楽器を正選択肢に、あまり知らな

いと思われるものを誤選択肢に用いながら学習をすすめていくことにした。

課題が理解できたところで、正選択肢と誤選択肢の差を徐々に少なくしていった。

以前に正選択肢として用いた具体物を誤選択肢として用いた組み合わせでも行なった。

   正選択肢と誤選択肢が近似となる組み合わせのときには、以下のような間違えさせないための援助を行なった。

@   スプーンとフォーク 正誤両方の金属部分を触って、どこが違うのかを明確に意識させた。

            また、用いるときの動作の違いも見せた。

A はさみとフォーク(どちらも持ち手が黄色) はさみの用途や動作を紹介した。

 

【結果】

組み合わせの難易度を少しずつ順調に上げていくことができた。学習のはじめのころは、選択肢を呈示すると

手がのびてきて、その手の動きに誘導されて目が動いているようだった。学習が進んできたところで「見るだけ

ね」とことばかけを行ないながら、のびてくる手を受けとめるようにした。現在は「(選択肢を)出すよ」とい

うことばかけだけで自分で手を引いて見ることもできるようになってきた。また、正選択肢と誤選択肢のそれぞ

れに視線をとめて(注視)、選ぶことができるようになってきた。

現在は、ステップ2を行なっている。見本に対する意識を高めるようなかかわりを行ない、選択肢呈示後に見本

へ戻って選択肢との見比べを行なうことができるように学習をすすめている。

 

2.研究授業の指導内容

(1)学習項目・ねらい・教材

(2) 展開

 

3.研究協議

特別支援学校の先生方々、障害者の支援施設の職員の方、学生の方などの参加がありました。実際に行なわれた授業

(今回はビデオ)を見た後、研究協議が行なわれました。

はじめに、授業者から指導案と実際の授業の内容が異なった理由の説明がありました。

 「同じの概念形成(具体物と絵カード)」では、よく見て出来たという結果を出して、次のステップに進めたい為に再

 試行したこと。また、「形の弁別学習」では、視覚弁別の段階であったが見本を十分見ていなかった様子から、全ての

 試行で見本のはめ板を指でなぞることを行なったなどの話がありました。

 

参加者の方々からは、お子さんがとても集中して学習している様子が見られた。左手(反利き手)をもっと活動させては

どうか。生活年齢に合った本を選びたいと思っているがどのように考えているか。選択肢の呈示の際に「見てね」「見て

いるね」「見るだけだよ」のことばかけのタイミングがよかったなどの感想、意見、質問などがありました。

 

理事長の宮城からは、「手の使い方」について、「手と手、目と手の協応動作や手の巧緻性の学習において左手も右手も

十分使うことは大切であるが『同じの概念形成』や『形の弁別学習』などの課題においては利き手で行なうこと。」など

の話がありました。また、「ことばかけ」について、「『見るだけよ。』のことばかけは子どもの手が動き出す前に言う

のが一番良い。どんなことばをかけるか、そのタイミングは、一人一人の子どもによっても異なるし、課題の理解の段階

や授業の前半、中、後半などによっても違ってくる。」などの話がありました。学習を行なう上での大切なことを学ぶこ

とができました。そしてスモールステップで系統的に学習を進めることの大切さが分かった研究会でした。